年金基金、MOTHERゲーム、市長産休…スイスのメディアが報じた日本のニュース
スイスの主要報道機関が7月7日~13日に伝えた日本のニュースから、①世界最大の年金基金が映す日本経済の苦境②ファンの情熱が育てた「MOTHER」③八幡女性市長の産休取得に論争、の3件を要約して紹介します。
日本では当たり前に感じるニュースも、スイスでは意外な切り口で報じられることがあります。スイスの全言語圏のメディアを追いかけていると、フランス語圏では、文化やゲームの話題を掘り下げる記事が比較的多いように感じられます、今週は「MOTHER」の特集が印象に残りました。
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年金基金で市場安定化を狙う日本
スイスの経済メディアcash.chは10日、日本政府が世界最大の年金基金である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)を通して、国内市場の支援を模索していると報じました。
記事によると、片山さつき財務大臣はGPIFについて「日本の金融資産にさらなる投資をする方向で後押しする方策を追求したい」との考えを明らかにしました。この発言を受け、市場では海外投資資金の一部が日本に回復するとの見方が広がり、円相場が上昇。10年物国債利回りは大きく低下しました。
記事は、GPIFが3月末時点で293.6兆円を運用する世界最大の年金基金であることを紹介し、「投資戦略のいかなる変更も、世界の金融市場に広範な影響を及ぼす可能性がある」と指摘しています。
また、政府が市場の安定確保に向け懸命に方策を模索している背景として、「40年ぶりの安値を記録した円安が、輸入コストを高騰させている」ことに加え、「高水準の国家支出と中央銀行による緩やかな利上げのため、債券市場は神経質になっていること」を挙げています。
記事は最後に、GPIFが2020年の運用見直しで外国債券の比率を引き上げた経緯に触れ、「この戦略の転換は、日本の金融政策における大きな方向転換となる可能性がある」と結びました。
ファン翻訳が育てた「MOTHER」の国際的遺産
日本で1988年に発売されたゲーム「MOTHER」シリーズは、海外での公式展開が限られていたにもかかわらず、熱心なファンコミュニティによる翻訳活動が、国境を超えた支持を広げてきました。スイスの仏語圏日刊紙ル・タンは「MOTHER 3」の発売20周年を機に、ファンによる翻訳がゲーム産業に果たした役割を振り返りました。
記事はまず、「MOTHER」シリーズを「真摯なJRPGであると同時に同ジャンルのパスティーシュ(先行作品を深くリスペクトした模倣作品)でもある」と評価しています。
「MOTHER」は1980年代末に英語版が完成していましたが、発売されることはありませんでした(1998年にデータが発見されインターネット上で公開)。その後、2006年に「MOTHER 3」が日本で発売されると、ファンコミュニティが3万人以上の署名を集め、公式英語版の発売を求めました。しかし、任天堂はそれに応じなかったため、有志のファンが独自に翻訳を制作し2008年に無料公開しました。
記事によると、このファンによる翻訳はゲーム業界でも高く評価されており、プロ翻訳者のスライマン・アワル氏は「ビデオゲーム史上最も印象的なファンプロジェクトの一つ」と評しています。また、任天堂を含む権利者による異議申し立てはなく、原作者の糸井重里氏も2023年のドキュメンタリー「EarthBound USA」で、この翻訳を好意的に認める発言をしたと報じました。
記事は、「MOTHER」シリーズの歩みがゲーム業界におけるファンコミュニティの重要性を浮き彫りにしていると指摘。企業が往々にしてコミュニティ活動に慎重な姿勢を示す一方、ファンによる翻訳活動が作品の人気を支え、発売から20年以上経った今も人気を博し続けていると結んでいます。
女性市長の産休取得が映し出す日本社会の構造
日本で初めて現職の市長として産休を取得すると発表した川田祥子・八幡市長(35)。ドイツ語圏日刊紙ターゲス・アンツァイガーに続き、日刊紙NZZも8日付の記事で、この出来事を「男性の大多数が育児休暇を取得しない国で引き起こされた論争」と報じ、日本社会の構造的問題を浮き彫りにしたと伝えています。
NZZは保守派の反応として、田母神俊雄・元航空幕僚長の「公務にある者がこんなに長期間休暇を取るということに、古い世代の私としては大変違和感を感じる」といったX(旧ツイッター)での投稿外部リンクを紹介。多くの保守的な日本人が地方政治家に「休暇ではなく献身」を期待している実態を説明しました。
一方で、上智大学教授の小川公代氏のコメントも紹介しています。小川氏は、この事例が「男性偏重の政治を可視化させた」と評価。市長の行動は単なる個人の選択ではなく、構造的問題を「見えるようにする」政治的意義を持つと論じました。
記事はまた、日本で父親の育休取得率は過去5年で倍増し40%を超えたものの、多くの男性が2週間に満たない期間しか取得していない現状にも言及しています。その背景として、根強く残る価値観だけでなく、育児休業給付金の制度にある「2つの落とし穴」を指摘。給付額に上限があることと、給与の大きな部分を占めるボーナスが算定対象外であることが、特に高所得者層の育休取得を妨げていると説明しました。
さらに記事は、川田市長自身が法的なグレーゾーンに置かれている問題も取り上げています。特別職の市長は雇用保険適用対象外で、育児休業給付金を受け取ることができません。それでも川田市長は月給85万円と賞与300万円を満額受け取る予定で、これが批判の一因にもなっていると伝えました。
記事は、川田市長の「制度は変えられるが、人間は変えられない」という言葉で締めくくられています。日本社会でしばしば強調される「意識改革」ではなく、まず制度改革が必要だとの見方を伝えています。
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女性の権利かトランスジェンダーの権利か。スイスの公共プールで、トランスジェンダーの女性が女性専用エリアから警察に連れ出される出来事がありました。この一件で、スイスでは女性かトランスジェンダーの人のどちらの権利が優先されるのか議論になっています。
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次回の「スイスメディアが報じた日本のニュース」は7月14日(火)に掲載予定です。
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校閲:上原亜紀子
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