スイスの兵役代替役務制度が特別な理由
徴兵制を敷く世界68カ国のうち、多くは良心的兵役拒否者に代替手段を提供している。各国の制度の中にはスイスのモデルと類似点を持つものもあるが、通常は制限がより厳しく、利用しにくい。
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6月14日の国民投票で、スイスの有権者は兵役から社会奉仕に切り替える要件を厳格化する法改正案の是非を判断する。
他国にも同様の制度は存在するが、その中身は大きく異なる。
社会奉仕はスイスの徴兵制度を構成する要素の1つで、軍事訓練に代わる選択肢。希望者は①兵役の適格者である、②兵役を拒否する良心・信条上の理由がある、③兵役の1.5倍の期間、社会奉仕に従事する意思があるという3つの基準を満たす必要がある。
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社会奉仕は徴兵制の存在と密接に関係している。それは良心的兵役拒否者、つまり兵役に適格ではあるものの、宗教的・倫理的などの理由から兵役に就くことを望まない人々にとって、非軍事的な選択肢を提供するからだ。
良心的兵役拒否権は、国際人権条約(欧州人権条約第9条、国連市民的及び政治的権利に関する国際規約第18条)によって認められている。これは、懲罰を受けることのない、かつ利用しやすく、軍当局から独立した非軍事的代替手段の存在を意味する。しかし、一部の国ではこれらの条件が全て満たされているわけではない。
世界人口レビュー外部リンクによると、現在68カ国が少なくとも国民の一部に対して何らかの形の強制的な兵役を課している。
大半の欧州諸国は徴兵制を廃止していたが、ロシアの脅威と職業軍人の不足により、徴兵制再導入の必要性についての議論が再燃した。リトアニア、スウェーデン、ラトビア、クロアチアは徴兵制の復活を決定した。一方、スイス、オーストリア、デンマーク、フィンランド、ノルウェー、エストニア、ギリシャ、キプロスなどは徴兵制を廃止したことがない。
オーストリアの代替役務はスイスのモデルに最も近い
スイスと同様中立国であるオーストリアは、17〜50歳の男性に兵役義務を課す。オーストリアの社会奉仕は、スイスの制度に最も近い。スイスと同様、良心的兵役拒否者に対し、公共の利益への貢献を条件とした兵役の代替手段を提供している。
しかし、オーストリアの制度には重要な相違点がいくつかある。期間は9カ月で、継続的に行われる。また、指定期間内に正式な申告書を提出する必要がある。
主に社会福祉・医療分野、すなわち病院、介護施設、救急医療サービスなどに配属される。配属先は、連邦首相府傘下の機関が、ニーズ、経歴、空き状況に基づいて決める。
スイスでは、社会奉仕は一般的に兵役よりも服務期間が長く、数年に及ぶ。兵役の途中での切り替え申請も可能で、その場合は残りの兵役期間の1.5倍の期間を務める。新兵学校入学前の段階は368日間となる。
もう一つの大きな違いは、スイスの社会奉仕服務者は自ら配属先を手配するという点だ。その範囲は、環境、農業、民間防衛など、より広範にわたる。
フィンランドにも、良心的兵役拒否者のための代替役務がある。スイスと同様、服務する人は配属前に予備訓練を受け、公認組織内で自ら配属先を見つけなければならない。ただし、フィンランドの制度は、非武装の軍事奉仕を選択できるという点で異なっている。
バルト三国の事情
バルト三国では、エストニアとラトビアも兵役の代替手段を提供しているが、これらはスイスのモデルとは大きく異なる。エストニアでは、兵役義務のある男性が、良心上の理由で代替役務を選択することが可能だ。しかし、それを選ぶ人は年間数十人程度にとどまる。代替役務は国防とも密接に関係している。
2024年に徴兵制が再導入されたラトビアでは、代替役務は依然として軍事組織に大きく左右され、真に独立した選択肢とは言えない。
リトアニア、ギリシャ、キプロスは批判に直面
リトアニア、ギリシャ、キプロスでは、代替役務は理論上は存在するものの、基本的人権を侵害しているとして批判されている。
2022年、リトアニアは欧州人権裁判所(ECHR)から良心の自由を侵害したとして非難された。裁判所は、軍の統制下にある代替役務制度は、真の良心的兵役拒否と両立しないと判断した。その後、リトアニアは徴兵法を改正し、国際基準に適合させた。外部リンク
ギリシャとキプロスは、基本的人権を繰り返し侵害しているとして、名指しで批判されている。特に、代替役務を認める決定が、完全な文民機関ではなく軍と関係のある機関によって行われている点が問題視されている。
さらに、宗教的信条に基づく申請は、他の理由よりも優先的に考慮されているとの報告もある。
韓国、刑務所への収監に代わる選択肢
欧州以外では、代替役務の反例として特に注目されるのが韓国だ。
韓国では2020年まで、兵役に代わる選択肢は存在しなかった。毎年、数百人の若い韓国人男性が良心上の理由で兵役を拒否したとして、約18カ月の懲役刑を言い渡された。これは犯罪歴として公式に記録され、その経済的・社会的影響は服役期間をはるかに超えて長く続いた。
2020年、良心的兵役拒否者への代替役務が導入された。しかし、この制度は依然、強い批判にさらされている。標準的な兵役のほぼ2倍にあたる36カ月間という期間に加え、刑務所内でしか実施できないため、代替的な懲役とみなされることが多い。
トルコとエリトリアの抑圧的なシステム
最も制限が厳しいのは、良心的兵役拒否権が存在しない、あるいは広く侵害されている制度だ。その1つがトルコで、国際社会から幾度となく非難されているにもかかわらず、兵役を拒否した者はいずれも刑事訴追を受けている。
エリトリアでは、制度はさらに厳格だ。男女両方に義務付けられている国民奉仕は、公式には18カ月に限られているが、実際には期間の定めがなく、数年、あるいは数十年にも及ぶことがある。従わないと、懲役刑をはじめとする様々な迫害を受ける。
さらに、徴兵された兵士は軍事任務だけでなく、強制的な状況下で低賃金の民間業務にも従事させられている。こうした状況から、一部の識者はこの制度を強制労働、あるいは奴隷制度に匹敵するものと評している。このような状況を受け、エリトリアの国民奉仕制度はしばしば国民統制の手段として捉えられ、国内で頻繁に批判される人権侵害の中核をなすものとされている。
編集:Samuel Jaberg、英語からの翻訳:宇田薫、校正:大野瑠衣子
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