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公共放送受信料引き下げ反対拡大 個人課税案は支持低下 スイス国民投票

SSRイニシアチブ第2回調査
投票を10日後に控えた今回の世論調査では、同案に「反対」と答えた有権者は54%で、前回調査から2ポイント増加した Keystone / Jean-Christophe Bott

3月8日にスイスで実施される国民投票を前に行われた世論調査で、公共放送受信料の引き下げに反対する意見が拡大していることがわかった。夫婦を個別に課税する案への支持は低下した。現金の保証を求める案は可決の可能性が高まり、国に気候基金を創設する案は否決の公算が大きくなった。

第2回世論調査はスイス公共放送協会(SRG SSR)の委託を受け、世論調査機関gfs.bernが実施した。

スイスの一般世帯の公共放送受信料引き下げと、徴収対象から企業を除外することを求めるイニシアチブ(国民発議、以下SRGイニシアチブ)について、gfs.bernの政治学者マルティナ・ムッソン氏は「否決される兆しは多いが、確実とは言えない」と述べた。

SRGイニシアチブの正式名称は「200フランで十分!外部リンク 」。スイス連邦政府が公共放送の受信料を現行の年間335フラン(約6万8千円)から200フランに引き下げることを求める。投票を10日後に控えた今回の世論調査では、同案に「反対」と答えた有権者は54%で、前回調査から2ポイント増加した。「賛成」は44%、「未定」は2%だった。

在外スイス人では反対が58%と、国内よりも明確に否定的な姿勢を示した。在外スイス人に受信料の支払い義務はない。公共放送受信料には、政府がSRGに委託する、国際社会向けの情報サービス提供に関する委託契約(フォーリン・マンデート)への資金も含まれる。SRGの中で最小の事業部門であるスイスインフォは国際事業の中核で、政府からの拠出金とSRGの資金で賄われている。

スイス公共放送協会(SRG SSR、以下「協会」)のフォーリン・マンデート(Auslandmandat外部リンク /Mandat pour l’étranger外部リンク  )は、スイス連邦政府とメディア企業である協会との間で締結された、国際社会向けの情報サービス提供に関する委託契約。委託内容は、協会が▼国外在住のスイス人向け▼スイスに関心のある全世界の読者向けのメディアサービス、の2点を提供すること。 

委託の目的は、在外スイス人の政治的権利を支援すること、また国外における偽情報に対抗することだ。例えばスイスインフォの報道は、スイスに関する誤解やフェイクニュースを是正し、根拠のある情報の提供に貢献している。 

委託業務にかかる費用、つまりスイスインフォの予算は①政府の拠出金②全世帯から強制徴収されるラジオ・テレビ受信料を原資とする協会予算が半分ずつ賄っている。 

政府の現在の拠出額(スイスインフォ以外の国際報道サービスも含む)は年間約1900万フランで、協会もほぼ同額を支出している。 

ムッソン氏は、在外スイス人は「大都市に居住し、昔から左派寄りの投票行動を取る傾向がある」と分析する。

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SRGイニシアチブを主導する保守右派・国民党(SVP/UDC)支持層では依然として賛成意見が目立つ一方、左派政党支持層では明確な反対意見が目立つ。他党の支持層もおおむね引き下げに否定的だ。

スイス政府に対する信頼も左右している。政府への不信感が強い層では賛成が大勢を占め、信頼している層では反対が優勢となっている。

反対派は、ほぼすべての所得層、教育レベルで拡大した。「反対の流れは社会のあらゆる層に及んでいる」とムッソン氏は指摘する。ただし男女差はある。女性は大多数が反対するのに対し、男性は賛否が拮抗している。「歴史的に見て、女性は公共サービスに賛成票を投じる傾向が強い」(ムッソン氏)。

賛成派が増えたのは18~39歳の層のみだった。

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夫婦別個課税への支持が急減

夫婦の税制改正法案は、支持が縮小した。婚姻状況に関わらず個人単位での課税を求める同案は、スイスで「結婚罰」と呼ばれる税制をなくすこを目的としている。

スイスでは、一定額以上の所得があるスイス国民と永住者は毎年、自営業か会社員かにかかわらず確定申告をしなければならない。現行の制度では、法律婚の共働き夫婦の場合、夫婦の資産と所得を合算して累進課税する。

所得を合計するとより高い税率が課せられるため、特に高所得かつ所得が同等の共働き夫婦では税負担が重くなる。これがいわゆる「結婚罰」だ。ただ、全ての法律婚カップルが一律に高い税金を支払っているわけではなく、片働き、あるいは配偶者の一方の所得が著しく少ない世帯では、逆に税負担が有利になるゆがみも生じている。

州税レベルでは、すでに一部の州が、共同課税される所得を半分に分割して税率を決定する是正措置をとっている。連邦レベルでも配偶者控除などの緩和措置はあるが、税のペナルティー、あるいは逆にボーナスを受けている夫婦は65万組に上る。

世論調査に回答した有権者のうち「支持する」と答えたのは52%で、前回調査から12ポイント減少した。「反対」は44%、「未定」は4%だった。

在外スイス人は依然60%が支持しているが、反対も14ポイント増の35%に上昇した。未定は5%だった。

政党間の対立も強まっている。これまでは左右を問わず多数の支持を得ていたが、国民党と中道右派政党の支持層が反対に回った。急進民主党(FDP/PLR)は引き続き支持しているが、勢いは弱まっている。

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一般に、連邦内閣(政府)や連邦議会が対案を示した場合、有権者はその立場に沿う傾向が強い。しかし、同案ではそうした構図とは異なる展開となっている。

議論を通じて制度上の課題が改めて指摘され、とりわけ単一所得世帯に不利益が及ぶのではないかとの懸念が強まっている。

一方、既婚・未婚間の税制上の平等を確保すべきだとする主張は、引き続き幅広い支持を集めている。

gfs.bernは、議論ごとの評価では賛成側がなお一定の優位を保っているとみる。ただ、重視される争点は反対側に有利に働いていると分析する。gfs.bernのルーカス・ゴルダー氏は「最終的には、より多くの支持者を投票に向かわせた方が勝利する」との見方を示した。

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現金イニシアチブの対案に支持

8日の国民投票では、連邦憲法に何らかの形で現金の供給を明記するべきか否か、についても有権者の意見が問われる。

明記に賛成する有権者は二次的に、具体的にどう明記するか、2つの案から1つを選択する。1つは市民の発案したイニシアチブ(国民発議)「硬貨と紙幣を伴う独立・自由なスイスの通貨に賛成を(現金こそ自由)」、通称「現金イニシアチブ」。もう1つは、このイニシアチブを受けて政府が策定した対案だ。

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今回の世論調査によると、市民発案の「現金こそ自由」イニシアチブよりも、政府の対案を支持する傾向が強まっている。

イニシアチブは61%の支持を得ているが、反対は36%、未定は3%となっている。一方、現金供給の保証を明確に打ち出した対案は回答者の70%が支持した。反対は24%、未定は6%だった。

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スイスに「気候基金」の創設を求めるイニシアチブは否決の可能性が高まっている。反対は65%に達し、賛成は31%、未定は4%だった。

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在外スイス人では反対は51%と比較的低いが、連邦財政がすでに圧迫されている中で、さらなる負担増を望まない意見が多数を占めている。

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第2回調査は2月11日から19日にかけて有権者1万1754人を対象に実施された。統計上の誤差は±2.8ポイント。

編集:Samuel Jaberg、英語からの翻訳・追記:大野瑠衣子

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