クレディ・スイス、「スイス回帰」で名声回復か

クレディ・スイス内権力闘争でのティージャン・ティアムCEOの敗北は、大方の予想を裏切る結果だった Keystone / Walter Bieri

スイスの銀行大手クレディ・スイス(CS)の取締役会は、多くの株主の期待に反してティージャン・ティアム最高経営責任者(CEO)の退任を決めた。後任はスイス国籍を持ち、現在CSの国内事業を率いるトマス・ゴットシュタイン氏だ。

このコンテンツは 2020/02/10 10:38

CSは「スイスの銀行」に原点回帰することで、内偵スキャンダルで傷ついた汚名を返上し経営を安定させようとしているようだ。CSは世界中に株主を持つ多国籍企業だが、その中核となる「スイスらしさ」が銀行に重みと良いイメージを与えている。

56歳のゴットシュタイン氏は1999年にCSに入社し、2015年に国内事業のスイスユニバーサルバンク、2016年にクレディ・スイス・スイス法人のCEOに着任した。将来はCSグループ全体の経営を率いると目されていた。

その時期は予想よりも早く到来した。ゴットシュタイン氏がCEOに就任するのは今月14日。スイス国籍者がCSのトップに立つのは2002年以来だ。

15年にCEOの座に着いた時、ティアム氏は同行の救世主として迎えられた。一体何が運命を狂わせたのか。

内偵スキャンダル

ティアム氏の評判を地に落としめたのは、元人事部長のペーター・ゲルケ氏と元ウェルスマネジメント責任者のイクバル・カーン氏など元幹部を、CSが極秘に内偵していた―というスキャンダルだった。環境団体グリーンピースに対してスパイ活動をはたらいていたという疑惑も浮上している。

スイス金融市場調査局(FINMA)とチューリヒ検察が現在、これらの事件を調べているが、こうした醜聞がCSのみならずスイス銀行業界全体のイメージダウンにつながった。内偵を指示したピエール・オリヴィエ・ブエ最高執行責任者(COO)は引責辞任した

CSはこれまで、ティアム氏は内偵の事実を知らなかったと主張してきたが、同氏に仕える幹部の監督を怠っていたと批判された。スイス銀行業界で発言力の強いウルス・ローナー会長との確執も大きくなっていた。

権力闘争

権力闘争に勝つのはローナー氏か、それともティアム氏か。メディアではティアム氏が有力と騒がれていた。株主らは、問題の多かった銀行経営にメスを入れ、業績を回復させたティアム氏の実績を評価していたからだ。

ローナー氏は04年に最高法務責任者として入行し、11年に会長に就任。モザンビークへの不正融資などこれまでのスキャンダルに関わった疑いが持たれている。

一方で、カーン氏やゲルケ氏、ブエ氏ら腹心の部下を失ったティアム氏は、行内で孤立しつつあると指摘されていた。

スイスは内偵スキャンダルを恥ずべき事件ととらえていたが、投資家の懸念は銀行の業績にあるようだ。株式市場ではティアム氏が来週14日に退任すると報じられるとCS株が約4%急落した。

CSが4月30日に開く株主総会では、取締役員の選挙が行われ、波乱が起こる可能性がある。

クレディ・スイスでのティアム氏の経歴

コートジボワールとフランス国籍を持つティージャン・ティアム氏は、2015年3月にクレディ・スイスのCEOに任命された。

スイス銀行業の伝統芸であるウェルスマネジメントに事業を集中させる再編計画に着手。同時に市場から数十億ドルの資本調達にも取り組んだ。

当初は過去の不正融資や脱税ほう助などの罰金に苦しめられた。19年後半までに経営改善の兆候もみられたが、いくつかの業績目標が達成されていないとの批判もあった。19年通年決算は今月13日に発表予定。

ティアム氏を最も追い詰めた事件は、ペーター・ゲルケ氏が人事部長から降格された19年初めに端を発した。COOのピエール・オリヴィエ・ブエ氏がゲルケ氏を秘密裏に監視するよう指示。19年9月に発覚し、メディアで大きく報じられた。

内偵スキャンダルが露呈したのは、ウェルスマネジメントの元責任者イクバル・カーン氏が私立探偵に尾行されていたことが端緒だった。CSによる最初の独自調査の後、ブエ氏1人の引責辞任で幕が引かれようとしていた。

ゲルケ氏に対する内偵が発覚したのを受け、スイス金融市場監督局が調査に着手。さらにグリーンピースに対する内偵も明らかになった。

ティアム氏とローナー氏の関係は昨年、悪化の一方をたどり、2月7日にティアム氏の辞任が発表された。

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