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スイス金融規制当局、AT1債の無価値化「問題はない」

FINMA
FINMAのウルバン・アンゲルン局長 © Keystone / Anthony Anex

スイス最大の金融機関UBSによる同業のクレディ・スイス(CS)買収の過程でCSの「AT1債」と呼ばれる特別社債が無価値化されたことについて、スイス金融市場監督機構(FINMA)は23日、「契約上の条件」を満たしており問題はないと発表した。

FINMAは買収の過程で、約160億フラン相当(約2兆2千億円)のAT1(その他Tier1資本)債券を無価値化すると発表。これに対し債券保有者から不満の声が上がっている。米紙フィナンシャル・タイムズは22日、米国の債権者がスイス連邦政府を相手取り訴訟を起こす準備をしていると報じた。

FINMAは声明外部リンクで、今回の措置は契約上の義務を遵守していると強調。「CSが発行するAT1商品は契約上、『バイアビリティ・イベント』、特に政府の特別な支援が認められた場合に元本が削減される」としている。

CS買収に当たっては、連邦内閣が同行の流動性確保を目的とした緊急令を発令。スイス国立銀行(SNB)は買収を円滑に進めるためUBSとCSに1千億フラン(1090億ドル)の流動性支援を提供する。また連邦政府はUBSが被る損失を90億フランまで保証する。FINMAはこれらの支援が決まったことで、AT1債の元本を削減する契約条件が満たされたと説明した。

AT1債は金融機関破綻時の弁済順位が低く、比較的リスクの高い証券の1つ。FINMAはCSに対し、AT1債を無価値化するよう指示した。

FINMAは債権者に対し、詳細は「資本性金融商品の発行者」、つまりCSに問い合わせるよう呼びかけている。

英語からの翻訳・宇田薫

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